研究概要 |
本課題では、セルロース生合成研究のための実験モデルとして、より単純な系である酢酸菌(Gluconacetobacter xylinus)を選択した。G.xylinusでは合成酵素遺伝子群(gxcesA~gxcesD)がクラスターを構成しており、これらが複合体の構成サブユニットであると予測されるため、これらの共発現系を大腸菌発現系で構築することを目的とした。一方で、酢酸菌のセルロース合成活性はc-diGMP(環状二グアニル-リン酸)という小分子の細胞内レベル依存的に制御されていることが示唆されている。そこでc-diGMPレベルを高めた大腸菌形質転換体を利用することが、大腸菌によるセルロース合成を実現する上で不可欠であると考え、c-diGMP合成酵素(DGC, DiGuanyl Cyclase)の大腸菌発現系を構築と、その発現系の最適化を目指した。 H22年度は、従来我々が用いていたものとは別のdgc遺伝子を用いることや、発現ベクターとして別のものを用いることで、より効率的なc-diGMP合成を目指した。その結果、より高い合成活性が報告された、ある好熱細菌由来のDGCを使うことでより大量のc-diGMPを試験管内合成で得ることに成功した。これにより、酢酸菌のセルロース合成酵素へのc-diGMPの影響を調べる実験を細かく行うことができるようになった。またLC/MS2の結果から、本遺伝子を発現している大腸菌体内においてもc-diGMPのレベルが明らかに上昇していることを確認することができた。つまり、大腸菌内にDGCとGxCes遺伝子群を共発現させることによりセルロースの大腸菌内合成系を開発するという本課題の目的の下準備が完成した。
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