研究概要 |
魚類の「性格」は遺伝的に決まっているのか?ヒトでは個体の性格を支配する「性格関連遺伝子」の存在が明らかにされた.また,ヒト以外の哺乳類や鳥類においてもその存在が報告されつつある.しかしながら,魚類において「性格」が遺伝子の多形に影響されることを示した報告は申請者の知る限りない.申請者はこれまでアユやメダカを対象に生殖,回遊,日周リズムを司る脳内分子機構の研究を進めてきた.那珂川におけるサンプリングの際にアユの友釣りを見て,「友釣りで釣れやすいアユは攻撃性が高い,連れにくいアユは攻撃性が低いのでは?遺伝的な違いがあるに違いない」と考えた.そこで本研究においては,アユとメダカをモデル魚として,魚類の「性格」を支配する脳内性格関連遺伝子群の探索と機能解析を試みた. 1.試料の採取 那珂川産天然アユ,琵琶湖産湖アユ,および近縁のリュウキュウアユ,メダカについては南方系のHd-rR系統,各10個体以上から脳,網膜,肝臓,ヒレなどを採取し,遺伝子のクローニングおよび多形解析用のcDNAおよびゲノムDNAを調整した. 2.脳内性格関連遺伝子群のクローニング 脳内性格関連遺伝子群の候補として,脳内のモノアミン性神経伝達物質であるドーパミンを対象として,これら伝達物質の受容体ドーパミンDRD1~5の網羅的cDNAおよびゲノムDNAのクローニングを行い,塩基配列の決定を行った.塩基配列決定に際しては,データベースを検索して縮重プライマーを作成してPCRを行うとともに,メダカゲノムデータベースを参考にクローニングを行った. 3.脳内性格関連遺伝子群の系統間の多型の同定 脳内性格関連遺伝子のエクソン,イントロン,およびプロモータ領域の塩基配列を決定し,天然アユ(阿珂川産両側回遊性),湖アユ(陸封型),近縁のリュウキュウアユの間に塩基配列の多型が存在するかどうか検討した.
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