1. 飼育実験に使用する人工海水を検討した。ライブシーソルト、テトラマリンソルトプロ(以下ライブ、テトラ)、および濾過海水中の硫酸イオンのδ34Sを測定した。濾過海水のδ34Sが20.3‰だったのに対し、ライブが-0.3‰、テトラが10.4‰と約10‰ずつ異なり、人工海水で硫黄同位体比を標識できる可能性が高いことを確めた。テトラ中でミズクラゲは1ヶ月で直径30mm以上に成長し、形態も正常だったが、ライブでは正常に成長しなかった。飼育実験には濾過海水とテトラを使用することにした。 2. 平衡石は硫酸カルシウムの結晶だが、平衡胞1個あたり数ngと微量で、硫酸バリウム化した上で分析に必要な収量を得るには多数の平衡胞が必要となる。3種の硫酸カルシウム試薬を硫酸カルシウムのまま測定した場合と、硫酸バリウム化してから測定した場合を比較したところ、硫酸バリウム化しない場合は、処理した場合に比べてδ34Sが平均0.3‰高かった。この差は濾過海水とテトラの同位体比の違いに比べ小さく、硫酸バリウム化は不要と判断した。 3. 分析に必要な平衡石の重量と精製方法、必要な個体数を検討した。精製の手順は平衡胞の摘出、90%エタノール固定、熱したイオン交換水での脱塩、550℃、4時間の加熱で有機物の除去と決定した。精製後の平衡胞約100個分の平衡石は約0.15mgだった。δ34Sの測定では硫酸カルシウムで0.6mg必要だが、これは平衡胞400個、50個体分に相当する。
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