研究課題/領域番号 |
22658066
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
豊原 治彦 京都大学, 農学研究科, 准教授 (90183079)
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研究分担者 |
岸田 拓士 京都大学, 理学研究科, 研究員 (40527892)
細井 公富 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 助教 (70410967)
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キーワード | ユノハナガニ / オプシン / 色覚 / 温度 / TRPチャネル |
研究概要 |
PCR-RACE法を適用することにより、昨年度得られていたオプシン遺伝子の全長と考えられる遺伝子を得た。この遺伝子の塩基配列をもとに演繹されるアミノ酸配列は、本遺伝子がオプシンをコードする可能性を強く示唆した。大腸菌の合成系を用いて、本遺伝子の翻訳産物を作製することを試みたが、溶解性が極めて低いため、活性測定を行うに十分な組換え体を得ることはできなかった。近縁種のオオギガニから本遺伝子のホモログと考えられる遺伝子断片を得、その演繹アミノ酸配列をユノハナガニと比較した。その結果、一部のアミノ酸配列に違いが認められ、深海への適応により、オプシン遺伝子が変化している可能性が示唆された。ミトコンドリアDNAの塩基配列の比較からは、これまでに形態学的観察から報告されているようにユノハナガニとオオギガニと系統進化的な近縁性が確認された。一方で、リボゾーム遺伝子の比較解析では、必ずしも近縁性が認められず、ユノハナガニとオオギガニの類縁関係については、今後、何種類かの核ゲノムにコードされる遺伝子の塩基配列を比較検討することが必要であることが示唆された。さらに、平成24年度に予定している船上での行動学的観察を行うための観察システムの構築とそのテストを行った。本システムは、高感度のカメラにより種々のLEDランプに対する嗜好性の観察、温度勾配に対する行動観察、TRPチャネルの各種標的物質(メンソールなど)に対する嗜好性観察を行うものである。実験室でサワガニを用いた行動観察では本システムが有効に機能することが確認されたことから、ユノハナガニを用いた平成24年度の船上での実験を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画であったオプシン遺伝子を得ることができ、その構造を知ることができた。また、オオギガニとの類縁性について遺伝子レベルでの情報をえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
湿地帯底泥が一種のバイオリアクターとして機能していることが明らかになったことから、次のステップとして湿地帯に生息する生物と環境因子との相互作用を、化学的な簡単から明らかにしていくことが重要である。おそらくそれぞれの生物は環境中に存在する有機物をモニターするため常に一定の割合で各種酵素を体外に分泌し、その分解産物を取り込むことで環境をモニターしていると予想される。このような環境因子と生物のクロストークを物質レベルで明らかにすることで、あらたな環境保全の方法の開発にもつながると期待される。
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