研究概要 |
飽和地盤に異温度流体(ここでは水)が流れ込む問題は,粘性係数の異なる2流体の浸透流すなわち二相浸透流問題として取扱われてきた。しかし,一次元地盤の浸透破壊実験から,この流れは,流れやすい大きな土粒子間隙への選択的流れであることがわかった。粘性係数の大きく異なる流体の浸透メカニズムと浸透破壊特性を明らかにするため,一次元浸透破壊実験を行い,飽和地盤への異温度流体の注入問題「冷(温)水飽和地盤中への温(冷)水の選択的水みちの流れ」について実験的に考察を行った。また,論文「浸透流及び浸透破壊現象における水温の影響」をまとめた。結論は次のようになる。 (1)冷水地盤への温かい浸透水の流れは,土粒子間隙内への選択的流れであり,不飽和地盤への水の侵入現象(フィンガリング現象)と同様の現象であると考えられる。 (2)ここで行った実験のように、ガラス面やアクリル面を通した場合には、サーモグラフィーでは水温分布を測定できない。本研究の遂行には、色素を用いる方法、や、多点水温計測法などを用いる必要がある。 (3)冷水地盤への温水流れは透水係数が著しく小さくなることがあり,得られる透水係数に大きなばらつきが生じ,データが安定しない。 (4)浸透破壊に対する安定性,すなわち,限界水頭差H_Cまたは限界動水勾配i_Cは,力の釣合いによって決まる現象であるので,飽和地盤に等温度の水が均等に流れる場合のものと差はない。 結論をまとめると次のようになる。水温の低い飽和地盤に水道水(地盤に比べて温水)を流すと,温水は,地盤中の大きな間隙など流れやすい部分を選択的に流れ,あるいは冷水塊が残存しそこを避けて流れる。すなわち選択的な水みち中の温水流れが生じる。水温による透水係数の変化だけを考え,浸透流理論を用いて算出したよりもかなり小さな流量しか流れないことになる。また,透水係数も小さくなる。一方,浸透破壊特性は,初期間隙比e_0の値によって決まるので,実験途中に間隙比の大きな変化がないと,浸透水温の変化に影響を受けない。サーモグラフィーでは水温分布を測定できないので,本研究の遂行には、色素を用いる方法や多点水温計測法などを用いる必要がある。
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