研究課題/領域番号 |
22658075
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
伊藤 博通 神戸大学, 大学院・農学研究科, 准教授 (00258063)
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研究分担者 |
白石 斉聖 神戸大学, 大学院・農学研究科, 助教 (00304121)
宇野 雄一 神戸大学, 大学院・農学研究科, 准教授 (90304120)
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キーワード | カルス / ハイパースペクトルカメラ / 近赤外線分光法 / 遺伝子組換え / 硝酸還元酵素遺伝子 / ホウレンソウ |
研究概要 |
本研究で使用したホウレンソウ培養細胞は、ホウレンソウ(Spinacia oleracea L.,cv.Orai)の下胚軸から誘導された野生株の培養細胞である。サンプルは、24時間連続照射で温度は25℃、光量子束密度はおよそ220μmoI m^<-2>s^<-1>の条件に保ったグロースチャンバー(グロースチャンバーMLR-350、Sanyo株式会社)内で培養した。培養にはMS (Murashige-Skoog)寒天培地を用いた。本研究で使用したハイパースペクトルカメラはV10(デルフトハイテック社製、波長分解能9nm、測定波長域は400nmから1000nm、ダイナミックレンジ8bit)である。レンズは単焦点レンズ(COSMICAR製、焦点距離8mm、f値1.4)を使用した。ハイパースペクトルイメージングシステムは、ハイパースペクトルカメラと光源装置(Newport Stratford社製、Oriel quartz tungsten halogen research sources 66499、250W QTH lamp 6334)、単軸ロボット(T4、ヤマハ発動機社製)で構成した。硝酸イオン濃度を10段階に設定(496mg/Lから4960mg/L)したMS培地を用意し、それぞれの培地に継代してから、2週間から3週間培養したカルスをサンプルとして用いた。培地から取り出したサンプルは黒色ろ紙の上に置き、5秒間の吸引ろ過、10秒間の吸引ろ過をしながらの洗浄処理、最後に20秒間の吸引ろ過を施してから、ハイパースペクトルカメラでの撮影を行った。撮影後に硝酸イオン濃度実測値をRQ-flex法を用いて測定した。得られた吸光スペクトルと硝酸イオン濃度から硝酸イオン濃度推定の検量線を作成したサンプルの濃度レンジ、ハイパースペクトル画像に対する画像処理方法、スペクトルの前処理などを検討した結果、取得したハイパースペクトル画像にビニング処理を施して取得された526nmから877nmの波長の吸光スペクトルに対し、前処理としてMSCを適用し、PLS (Partial least squares)法によって導出された検量線の硝酸イオン濃度推定精度が最高(評価用データ相関係数が0.7363)となった。NR遺伝子の導入には、パーティクルガン(Biolistic PDS-1000/He Particle Delivery System (Bio Rad))を用いた。遺伝子組換えの条件が適切ではなかったためNR遺伝子導入株を作出することはできなかった。そこで、硝酸イオン濃度の低濃度サンプル(961.0mg/L以下)と高濃度サンプル(961.0mg/L以上)の判別精度を評価した結果、検量線によるイオン濃度推定値を用いた判別では85.0%、PLS-DA (Partial Least Square-Discriminant Analysis)による判別では87.4%の精度で判別することができた。野生株の硝酸イオン濃度が961.0mg/L以上となる培地上においてNR遺伝子導入株の硝酸イオン濃度が961.0mg/L以下であれば、本研究で開発したシステムを用いることで、約80%の精度で遺伝子組換え体を判別することが出来る。
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