本研究の目的は、青果物を細胞破壊なしに(抑制して)凍結させ、長期貯蔵することである。以下の成果を得た。 1.アルミニウム容器・粒を利用した超急速冷凍法の開発 できるだけ速く凍結させることが細胞破壊の抑制に有効である。そこで、熱伝導性の優れた金属(銀、銅、アルミニウム、ステンレス)板にスライスしたトマトを密着させて冷凍すると、冷凍時間はアルミニウムが最短であった。この場合、板が厚いほど、また両面から密着させれば、密着無しと比べ、冷凍時間が大幅に(約15倍ほど)短縮できた。次に、丸ごとのトマトを対象に、アルミニウム製の容器にアルミニウム粒を入れ、それにトマトを完全に埋没させて冷凍すると、冷凍時間はアルミニウム粒を用いない場合と比べ、約5倍ほど短縮できた。この結果は、最近話題のエタノールによる液体凍結法より、やや優れていた。このように、アルミニウム材が青果物の急速冷凍にかなり有効とわかった。アルミニウム容器のかたち、粒の大きさ等の調整で、超急速(瞬間)冷凍が可能と考えられる。 2.熱ストレス負荷による冷凍果実の細胞破壊、裂果、解凍後のドリップの抑制 凍結による細胞破壊を抑制するため、次に、熱ストレス処理を行った。トマトを40~50℃のマイルドな高気温(または温水)下に12~24時間置く処理が、植物の細胞膜・壁を頑丈にし氷晶化による細胞破壊を抑制する効果を見出した。最適化手法を用いて、最適な(細胞破壊を最も抑制する)熱ストレス処理法を究明すれば、クラック(裂果)および解凍時におけるドリップを最小限にできると考えられる。 3.自然で無害な凍結保護剤(トレハロース等)を利用した細胞破壌の抑制 凍結による細胞破壊を抑制するため、自然で無害な凍結保護剤(トレハロース等)を添加すると、トマトの細胞破壊が少なくなった。これはトレハロースの働きでガラス化状態になり(結晶化しないで)、氷のサイズが小さくなったためと考えられる。この方法の有効性もある程度確かめられた。
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