青果物の長期貯蔵を考えると、冷凍貯蔵法が有効である。しかし、植物細胞は硬い細胞壁があるので、冷凍により細胞が壊れやすいという問題がある。そこで本研究では、青果物の冷凍において、細胞破壊を抑制する方法を検討した。さらに農業分野に適用させるため、低温ストッカー(-60℃)を用いて安価かつ簡易な冷凍法を検討した。細胞破壊の抑制法として、(1)アルミニウム材を有効利用した急速(瞬間)冷凍法の開発、(2)40~50℃の熱ストレス処理、(3)自然で無害なトレハロース添加の3つの方法を検討した。(1)について、冷凍時間は、スライストマト(2cm厚)の場合、アルミニウム板を接触させた方が、また板厚の厚い方が早く冷凍できた。また片側のみの接触では10分程度であったが、両側から接触させると3分ほどとなり、約3倍速く冷凍できた。一方、丸ごとのトマトについては、トマトをアルミ容器に入れアルミ粒で埋没させると、冷凍時間は約20分となり、アルミニウム材不使用の場合の約90分と比べ、約4.5倍短縮できた。これにより細胞破壊をかなり抑制できた。これらの結果はエタノールによる液体凍結法よりやや優れており、また液体窒素(-120℃)噴霧による方法と比べても遜色はなかった。アルミニウム材の有効利用が超急速(瞬間)冷凍に有効と分かった。(2)については、気温45℃、24時間の熱ストレス負荷をトマトに与えることで、冷凍による細胞破壊や組織のクラックをある程度抑制できた。(3)については、トマトの果柄をトレハロース溶液に24時間以上漬けてトレハロースを吸収させ、その後冷凍させれば、冷凍による組織のクラックを抑制できた。以上より、熱伝導性の高いアルミニウム材を有効利用した急速冷凍法、熱ストレス処理、トレハロース処理を適切に組み合わせた冷凍法が、水分含量の多い青果物の冷凍に有効であり、安価かつ簡易な急速冷凍法を確立する上で重要と考えられる。
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