研究課題/領域番号 |
22658077
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
堀端 章 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (70258060)
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キーワード | 薬用紫蘇 / ペリルアルデヒド / 花成制御 / 腺鱗 / 遠赤色光 / 成分育種 |
研究概要 |
'紀州在来薬用紫蘇'における、個葉の生長と腺鱗(精油胞)密度の変化との関連を調査した結果、腺鱗密度が葉面積の拡大に反比例して減少すること、すなわち、腺鱗は葉の形成初期に形成されることが明らかになった。一方、15個体について成熟葉の腺鱗密度とペリルアルデヒド(PA)含有量との関係を調査したところ、両者に有意な正の相関を認めた。このことは、少なくとも同一環境下で栽培された植物では、腺鱗密度がPA含有量の代替指標となることを示唆している。また供試した15個体のPA含有量には、個体間の変異が認められた。そこで、平成24年度には、その個体別次代系統を圃場に育成して、PA含有量に関する遺伝的改良の可能性を調査する予定である。 また本研究では、高機能性シソの周年生産を実現するため、その基幹的技術となる'紀州在来薬用紫蘇'の花成制御法についても検討を進めている。シソなどの短日植物では、遠赤色光(730nm)の夜間照射によって花成促進が期待される。そこで、暗期前半の2時間、'紀州在来薬用紫蘇'に遠赤色光を照射したところ、照射強度が2.3μmol/m^2/s以上の試験区では、想定に反して、照射強度依存的に花成が抑制された。シソでは、栄養生長から生殖生長への転換期にPA含有量が高くなることが知られているので、この実験においてもPA含有量の変動を調査した。無照射区のPA含有量は、想定通りの時期にピークを迎えたが、遠赤色光照射区では、2週間以上も花成が遅れたにもかかわらずPA含有量のピークは無照射区と同じ時期であった。このことは、PAの産生を促すシステムと花成を促すシステムとの間に乖離があり、花成の制御のみでは高機能性を維持することができない可能性があることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に計画した課題についてはすべてを実施し、着実に成果が得られている。しかし、遠赤色光照射によって花成促進ができないなど想定外の結果もあって、研究全体の進捗としては順調ではない部分もある。申請時の研究計画を基準とすると、PA含有量を指標とする成分育種の面で遅れが見られるが、薬用紫蘇の需要拡大と生産拡大に向けた取り組みは、むしろ想定以上に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、まず、PA含有量を指標にした選抜育種の可能性を検討する。また、平成22年度の試験結果から青色光の照射が花成を顕著に抑制すると同時にPA含有量を増加させることが明らかになっている。このことと、本年度の遠赤色光を用いた試験の結果を踏まえて、青色光照射にともなう花成抑制とPA含有量の変動との関連を、栄養成長期と栄養生長から生殖生長への転換期とに分けて調査する。さらに、青色光がロスマリン酸など他の機能性成分含有量に及ぼす作用の解析、ならびに、薬用紫蘇に特異的に含まれる成分の同定も行う予定である。
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