従来の農業工学において土壌に含まれる水分含有量の調査を行うには、実際に土壌を採取する定容積採土法や誘電率を計測する方法および簡易的なPFメータを用いるものなどが使用されている。しかしながら、これらの方法では特定部位の計測しかできないことおよび計測のリアルタイム性に問題があることなどが以前から指摘されている。そこで、本研究では、音波振動と高い感度のレーザードップラ振動計を用いた音響探査法により極浅層土壌中の水分分布計測が行えるかどうかについて検討を行った。最初に粒径約300ミクロンの海岸砂を用いて、負圧差灌水方式により水を砂槽内部から給水した場合について実験を行った。その結果、完全に乾燥した砂に給水を行った場合には伝搬音速と体積含水率が比例して増えることが明らかになった。次に市販の培養土での実験を行った。培養土は実験結果を安定させるために2mmの篩を用いて極端に大きな粒径のものや長い繊維質のものが混入しないようにしたものを用いた。また、それでも砂よりははるかに粒径が大きいため、伝搬波形が乱れても推定音速が安定するように振幅2乗相和法と相互相関法を組み合わせた手法を提案し、1m/s以下の精度で伝搬音速が算出できるようにした。 実験結果からは、砂の場合と異なり伝搬音速と体積含水率がほぼ反比例することが明らかになった。この原因は市販の培養土は2mmの篩でふるったとしても砂よりも土粒子間の間隙が大きく、その粒子間に水が入った場合には水の表面張力による粘性が強く働いて土粒子の動きを制限するためと思われる。 また、屋上緑地化を想定した底が浅い容器を用いた実験も実施した(砂を使用)。その結果、含水率が異なる箇所がごく浅い領域にある場合には非接触音響探査法により映像化が可能であることが判明した。
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