研究概要 |
哺乳動物の未受精卵を用いた超低温保存法の開発を目的として,本年度はマウスをモデルとして用い,cryotopを用いたガラス化保存に関して検討を行った.まず初めに,現在用いられている凍害保護物質(ethylene glycol(EG)およびdimethyl sulfoxide(DMSO),ガラス化液中のカルシウムの有無について検討を行ったところ,カルシウム無添加EGのみを凍害保護物質として添加したガラス化液を用いた場合,他の区と比較して加温した卵の体外受精後の高い受精率・胚盤胞までの発生率が認められた.しかしその受精率は20%程度とまだ低く,さらなる改善が必要であった.そこで次に,ガラス化保存時における未受精卵の卵丘細胞付着の有無が及ぼす影響について検討を行った.その結果,卵丘細胞を付着させた状態でガラス化保存した未受精卵は,加温後体外受精を行った場合,高い受精率および胚盤胞への発生率(約70%)が認められた.さらに,個体への発生能を検討する目的で,ガラス化・加温した未受精卵を体外受精し,得られた受精卵を偽妊娠雌マウスに胚移植した.その結果,産仔率は,新鮮未受精卵を胚移植したときと同程度の高い産仔への発生率が認められた(約70%).これらのことから,卵丘細胞を付着させた状態で,さらにカルシウム無添加EG添加ガラス化液を用いることにより,マウス未受精卵をガラス化保存できることが明らかとなった.現在,さらなる改良を目的として不凍タンパク質をガラス化液に添加し,ガラス化保存したマウス未受精卵の加温後の生存率,体外受精後の受精率・胚盤胞への発生率を検討している.
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