研究概要 |
哺乳類の正常な発生に必須なゲノムインプリンティングおよびその分子的実体であるDNAのメチル化に着目し、メチル化を人為的に操作することによって、「機能的な精子細胞」のin vitroにおける確立を目指す。そのために、本年度は、脱メチル化剤をマウス胎子線維芽細胞に添加し、インプリントの人為的な消去を目的とする実験を行った。 PWKマウスの胎生14.5日目の胎子より樹立した線維芽細胞を用いて、3種類のDNAメチル化阻害剤(Zebularine,DNA methylation inhibitor RG108および5-Aza-2'-deoxycytidine)を0.1μM-100μMの濃度で添加し、インプリント遺伝子および反復配列領域におけるDNAメチル化状態を解析した。解析した領域は、精子でメチル化されるインプリント遺伝子であるH19,IG-DMR,Rasgrf1、卵子でメチル化されるインプリント遺伝子Igf2r,Peg1,Peg3,Lit1,Snrpn、さらにゲノム全体のメチル化レベルを解析するために、反復配列であるLine1の5'および3'領域、IAP,Major satellite,Minor satelhte領域を選んだ。 薬剤処理した線維芽細胞からDNAを回収し、バイサルファイト処理を行った後、上記プライマーによるPCRを行った。PCR産物が確認できたものについては、制限酵素処理によりメチル化レベルを電気泳動で確認した(COBRA法)。 高濃度の阻害剤添加では早期に細胞が死滅したため、2週間培養後生き残った細胞についてDNAメチル化解析を行ったが、全ての領域について明らかに脱メチル化される薬剤・至適濃度を見つけることはできなかった。
|