哺乳類の正常発生に必須なプロセスである生殖細胞形成過程におけるゲノムの印付け(インプリンティング)に着目し、in vitroで機能的な配偶子を形成するために、インプリンティングの分子的実体であるDNAメチル化を人為的に操作することによって、雌マウス体細胞型のインプリンティングパターンを精子型に変化させることを目的に実験を行った。 PWKマウスの胎子より樹立した線維芽細胞を用いて、3種類のDNAメチル化阻害剤(RG108、Zebularine、5-Aza-2' deoxycytidine)を添加し、8~11日間培養後、インプリント遺伝子(精子でメチル化されるH9、卵子でメチル化されるPeg3・Igf2f)のメチル化状態を解析した。解析手法として、昨年度行ったCOBRA法をもとに、QIAGEN社のQIAxcelフラグメント解析装置を用いたDNAメチル化の定量(Bio-COBRA法)を行った。 H19遺伝子のメチル化は、薬剤添加前は55~86%であったが、RG108(1μM~100μM添加により52~92%、Zebularine(1~10μM)添加により56~94%、5-Aza(0.1~10μM)添加により52~92%と一部の濃度ではメチル化が上昇した。Peg3遺伝子は、薬剤添加前は43~57%のメチル化レベルであったが、RG108添加により28~54%、Zebularine添加により44~52%、5-Aza添加により29~75%とRG108添加群の多くでメチル化が低下した。Igf2r遺伝子のメチル化は、薬剤添加前は49~53%であったが、RG108添加により42~64%、Zebularine添加により49~57%、5-Aza添加により48~65%とメチル化の低下はほとんど見られなかった。今回用いた薬剤・濃度では全ての遺伝子のメチル化レベルを低下させることはできなかった。
|