研究概要 |
ビビアナイトが水稲根面に生成するための(1)土壌条件、(2)リンレベルなどの施肥条件、(3)生育段階などの栽培条件について検討した。川渡フィールドセンター4号水田(非アロフェン質黒ボク土作土,「川渡」)、栗原市鶯沢袋(グライ低地土水田作土2007年春採取「袋」)、大崎市原嶋(グライ低地土水田作土、「原嶋」)の風乾土(<5mm)500gを500mL容ガラストールビーカーに入れ、0.3gN,0.3gP_2O_5,0.3gK_2Oをそれぞれ被覆尿素(70日型)、過リン酸石灰(乳鉢粉砕)、被覆硫加(70日型)として混合し、ひとめぼれ苗をポット当たり1本移植した。各土壌についてリン無施肥区を設定した。根を風乾後、1M塩酸可溶画分のP,Fe含量等を測定し,根周辺の鉄化合物を光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡で観察した。 根の1M塩酸可溶P含量は採取時期により変化し,かつ,「川渡」の水稲根は「袋」「原嶋」の1/2以下と少なかった。根の1M塩酸可溶Fe含量も「川渡」で他より少ない傾向であった。「袋」では保存中の易分解性有機物減耗のためか初期の還元が遅れ,水稲根の同Fe含量も初期に少なかった。ビビアナイトの晶出は「原嶋」,「袋」で認められ、「川渡」では外見上認められなかった。「川渡」では活性Al含量が多くリン酸イオン濃度がビビアナイト晶出に達しない、Al,腐植の作る団粒等により還元進行が不均一である,などが考えられる。リン無施肥区において、稲の茎数が少なかったが、「原嶋」「袋」ではビビアナイトの晶出が認められた。また、生育段階に関して、大部分が若い根からなる7月初旬ではビビアナイトがほとんど認められなかったが、8月初旬になると「袋」「原嶋」では鉄プラークのほとんどない根にビビアナイトが認められた。
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