研究概要 |
1.GA代謝酵素遺伝子を制御発現する形質転換イネの作出 GA代謝酵素遺伝子(OsGA2ox1)をストレス応答性のプロモーター制御下に発現するような融合遺伝子を構築した.既知の配列を基にプライマー設計し,RT-PCR法によりOsGA2ox1を単離した.既に単離されているストレス誘導性DREBlBプロモーター下に,OsGA2ox1を発現するバイナリーベクターを構築し,アグロバクテリウムを介してイネ品種ゆきひかり由来のカルスに形質転換した.現在,形質転換カルスの選抜を終え,再分化培地上でシュートの形成を行なっている. 2.KAO欠損株と野生株間の遺伝子発現比較 KAO欠損株と野生株間で見られる遺伝子発現プロファイルの違いについて,マイクロアレイを利用して明らかにするため,十分に水分を供給した条件で栽培した野生株,KAO欠損株の葉組織よりRNAを抽出した.また,乾燥ストレス後の両植物体サンプルからもRNAを抽出した.Low RNA linear amplficationキットを用いて,比較サンプルをそれぞれCy3及びCy5でラベル化した.イネ44KオリゴDNAアレイ(アジレント)を用いて,発現解析を行った.KAO欠損株と野生株間のひストレス環境下での発現プロファイルからは極めて多数の遺伝子の発現がダイナミックに変化していることが明らかになった.GAの欠損により多様な代謝経路が変動している中で,乾燥耐性を付与する可能性のある遺伝子を見出すため,野生株で乾燥により誘導される遺伝子に着目した,乾燥ストレス耐性と密接に関わるDREB2遺伝子やその下流で制御される遺伝子群似ついてはKAO欠損株で高発現されているわけではなかった.つまり,KAO欠損株においては既知の機構とは異なるメカニズムで,乾燥耐性が獲得されている可能性が示された.
|