本研究は、植物のアスコルビン酸輸送体の同定を目指しており今年度は以下の研究を行った。 1)二次元クロロフィルイメージングを利用したシロイヌナズナアスコルビン酸輸送変異株の探索 初めに本年度購入した二次元クロロフィルイメージアナライザーにより、非光化学消光値(NPQ)を指標としたスクリーニング条件の設定をシロイヌナズナの野生株およびアスコルビン酸欠乏VTC変異体を用いて行った。その結果、100mmol/m2/sの連続光で栽培した植物体に対し、5mM濃度のアスコルビン酸Naを加え12時間後がvtc変異体のNPQ回復に有効であることが示された。次に、VTC変異体の種子に対し、0.03%(w/v)濃度のエチルメタンスルホン酸処理を行い播種後に自殖M2種子を得た。これらをプレートに蒔き、3~4週齢のロゼット葉が充分に展開した植物体に対しアスコルビン酸Na処理を行ない、二次元クロロフィルイメージアナライザーによりNPQの回復が認められない個体を指標に、目的の変異体候補として本年度は24個体の植物を選抜した。現在、第二段階の選抜として銀染色によるアスコルビン酸組織化学的検出法および葉中アスコルビン酸レベルについて検討を行っている。 2)遺伝子発現情報に基づいたアスコルビン酸輸送体遺伝子の探索 シロイヌナズナのトランスクリプトーム情報と既存のプロテオーム情報から、9つのアスコルビン酸輸送体の候補となる膜結合型タンパク質遺伝子の絞込みを行なった。これら遺伝子をGatewayシステムにより植物形質転換用ベクターにクローン化し、タバコBY-2培養細胞に形質転換し、タグ抗体による組換えタンパク質発現確認後、培地にアスコルビン酸を添加し、形質転換細胞内アスコルビン酸レベルの検証を行ってきたが、現在までポジティブなアスコルビン酸輸送体候補は得られていない。この点を補うため、今年度はさらに酵母の発現系にも着目し、シロイヌナズナおよびイネから多数の輸送体候補遺伝子を導入した発現ライブラリーの作製を進めた。来年度は、このライブラリーを用いてMALDI-TOF/MSによる目的の輸送体候補を探索を進める。
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