研究概要 |
核酸塩基とチオグリコシドを結合した人工糖供与体の設計、合成を検討した。本研究では、活性化を受ける部分に核酸塩基を導入すること、安定で長期保存が可能であること、活性化剤や溶媒、生成物の立体化学に関する知識が豊富であることから、チオグリコシドを選択した。具体的には、糖がチオグリコシドを介して核酸塩基と結合したヌクレオチオ糖(T-Galなど)を設計、合成した。 thymidine(T)とadenine(A)を有するチオール誘導体を、4-bromothiophenolから、既知の合成法に基づいて合成した。それらを、ガラクトース(Gal)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)と反応させることによって、T-Gal、A-Gal、A-GlcNAcの合成に成功した。 T-GalとGlucose受容体とのグリコシル化反応を検討した結果、NIS+TfOHの存在下でのグリコシル化によって、目的とするラクトース誘導体(Galb1→4Glc)が良好な収率で得られた。一方、同条件下におけるT-Galと糖受容体の反応においても、良好な収率で二糖が得られ、脱離基がTを含んでいてもグリコシル化反応が進行することがわかった。T-Galとアデノシン誘導体のグリコシル反応、およびA-Gal、A-GlcNAcを糖供与体とするグリコシル反応では、上記の反応条件では殆ど反応が進行しなかった。 そこで、反応条件を種々検討したところ、MePhSCl+AgOTfという活性化剤の組み合わせによって、目的とする二糖が得られることを見出した。今後は、他の糖供与体(例:C-NeuNAc,G-Glc)の合成と、それらのグリコシル反応を検討する予定である。 一方、プログラミングに用いるDNAテンプレートについても、A、T、C、Gを有するユニット合成が済んでおり、現在それらをペプチド結合で連結されている。このテンプレートの合成が終わり次第、テンプレート存在下でのグリコシル化反応の検討を行う予定である。
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