研究概要 |
糖鎖は、分化・発生、免疫、癌化、タンパク質品質管理などにおいて様々な役割を果たし、近年、第三の生命鎖として注目されている。糖鎖の機能解明には、特定の糖鎖に特異的な抗糖鎖抗体は極めて有用なツールとなるが、その作製は一般的に困難である。本研究で我々は、硫酸基転移酵素二重遺伝子欠損マウス(Kawashima et al., Nature Immunology, 6: 1096-1104, 2005)を硫酸基転移酵素強制発現株で免疫し、二種類の抗硫酸化糖鎖モノクローナル抗体S1およびS2を樹立した。S1およびS2はともに野生型マウスの高内皮細静脈(HEV)とは特異的に結合したが、硫酸基転移酵素二重遺伝子欠損マウスのHEVとは結合しなかったことから、硫酸化糖鎖を特異的に認識すると考えられた。さらに糖鎖アレイを用いて485種類の糖鎖に対する結合性を調べたところ、これら二種類の抗体はともに、リンパ球ホーミングレセプター・L-セレクチンのリガンドとして知られている6-スルホシアリルルイスXおよびその構造からフコースを除去した6-スルホシアリルLacNAcに特異的に結合することが明らかとなった。現在、これらの抗糖鎖抗体を用いて、リンパ球ホーミングにおける糖鎖の機能解明を進めているところである。本研究で提示する新しい方法論は、他の糖鎖生合成酵素の産物に対しても特異的抗体を効率よく作製するために広く応用しうる汎用性の高いものであり、糖鎖生命科学の発展に貢献することが期待される。
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