APOBEC3Gはヒトの持つ抗ウイルス性因子であり、HIV-1が感染するとウイルスの持つ蛋白質VifがAPOBEC3Gのプロテオソーム分解を引き起こす。研究代表者らはHIV-1 Vifによるプロテアソーム分解を、ジメチルアミノピリジンの2位と6位にメルカプト基をもつ側鎖を導入した対称的構造をもつ人工キレーターMF1やそのジスルフィド体MF2、MF3が阻害することを見出した。これらの化合物は様々な蛋白質のユビキチン化/プロテアソーム分解を、既知のプロテアソーム阻害剤MG-132とは異なる作用機序で阻害した。 すなわち、まず始めに、APOBEC3Gのポリユビキチン化と化合物の作用の関連について検討したところ、化合物がプロテアソーム阻害剤MG-132とは異なるメカニズムで作用していることが示された。次に、これらの化合物の作用の特異性を検討した。すなわち、Vifもユビキチン化/プロテアソーム分解を受けるがこれを阻害するのかについて調べたところ、阻害を示唆するデータが得られた。そこで、IL-1刺激によるNF-κBの活性化(この経路にはIκBなどの蛋白質のユビキチン化/プロテアソーム分解が関わることが知られる)を化合物が阻害するかどうか調べたところ、阻害効果が示された。これらの結果から、この化合物は様々な蛋白質のユビキチン化/プロテアソーム分解を、プロテアソーム阻害剤MG-132とは異なる作用機序で阻害する化合物であることがわかった。
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