研究課題
近年、アレルギーの誘発に大きく関与するサイトカインとして上皮細胞が産生するthymic stromal lymphopoietin(TSLP)が注目されている。申請者は生活環境中に存在する化学物質のうちm-キシレン、1,2,4-トリメチルベンゼンをマウス皮膚に塗布した場合に皮膚上皮組織でのTSLPの産生が強く誘導されることを見いだし、さらにTSLP産生を介してアレルギーの発症、増悪化を誘発する作用を示すことを明らかにした。本研究では、上皮細胞におけるこれらの化学物質の受容機構を明らかにすることを目的とした。平成22年度ではm-キシレン-アフィニティービーズを調製し、m-キシレンに選択的に結合するタンパク質を検出した。本年度は、この結合タンパク質を2次元電気泳動で分画し、検出された十数個のタンパク質を質量分析装置にて同定した。同定されたタンパク質の一つに、TSLPの産生が増大しているアトピー性皮膚炎患者皮膚組織において発現量が低下していることが報告されているタンパク質があった。本タンパク質に対する特異抗体を用いて、m-キシレン-アフィニティービーズ及びコントロールビーズの結合タンパク質をWestern blot法により解析したところ、本タンパク質がリガンドに特異的に結合していることを確認した。現在、m-キシレンが本タンパク質の活性を阻害するかどうか検討中である。またTSLPの恒常的に産生する上皮細胞株(特許出願済)および通常の上皮細胞(PAM212)にヒトTSLPのプロモーター領域(-4.3kBp)を組み込んだレポータージーン(理研 玉利博士より供与)を導入したが、両細胞においてレポーターの発現に顕著な差は認められなかった。用いたプロモーター領域外に本細胞での恒常的TSLP産生制御部位がある可能性が考えられた。また本細胞では各種MAPキナーゼの阻害薬の効果を検討したところ、特にERKが本細胞のTSLP産生に大きく関与していることが示唆された。
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