研究課題
遺伝子組換え(GM)作物の混入試験や牛肉中のプリオンタンパク質の検出など、タンパク質の超高感度測定技術は、国民の食の安心・安全確保に大きく貢献している。通常、タンパク質の超高感度測定はウェスタンブロットが広く用いられているが、この方法はSDS等の強い界面活性剤で変性させたタンパク質を対象とするものであり、溶液中のネイティブなタンパク質の検出や、食品の加工等に伴う抗原性(アレルゲン性)の変化の検出などには必ずしも適さないことが知られている。本研究は、申請者が独自に開発したアレルギー試験法「EXiLE法」の超高感度測定技術に立脚し、アレルギーに重要なIgE抗体ではなく、より汎用的な抗体であるIgG抗体を用いて抗原タンパク質を定量できるよう改変し、アトグラム(10^<-18>g)オーダーの超高感度測定システムの開発を目指す。本年度は、昨年度までに人工遺伝子合成技術を用いて作製したキメラ遺伝子を導入し機能解析を行なう細胞である、ラットの培養マスト細胞株(RBL-2H3細胞)にヒトFcεRIと転写因子NF-AT(Nuclear Factor of Activated T-cells)依存的にルシフェラーゼを発現するレポーター遺伝子を導入した、RS-ATL8細胞について、その活性化の閾値に関する検討を行なった。すなわち、卵白に対してアレルギーを有する患者とそうでない非患者とを食物負荷試験によって分け、様々なレベルの卵白特異的IgEを持つこれら患者血清によりRS-ATL8細胞を感作したとき、活性化に要する卵白抗原濃度を調べた。その結果をROC(Reciever Operating Characteristic)曲線およびロジスティック回帰により解析し、95%陽性一致率および95%特異度の観点から、刺激前の2倍のルシフェラーゼ発現量を活性化の閾値とすることが最も妥当と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
キメラ受容体遺伝子の作製は完了しており、また、その解析系であるところのRS-ATL8細胞の応答精度は、Fisherの正確確率で2.509x10^<-6>という極めて高い信頼性を有していることが分かったため。
来年度最終年度を迎えるにあたり、本キメラ受容体のRS-ATL8細胞における機能解析を行なう。計画の大きな変更はないが、導入遺伝子の発現量を確保するため、必要に応じ、様々な遺伝子導入法を検討する。具体的には、リポフェクション法の他、各種機器を用いたエレクトロポレーション法も用いる。
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アレルギーの臨床
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