研究概要 |
今年度は、主に湾曲形成の数理的な部分と、湾曲制御の新たなメカニズムと思われる血管形成の理解に関して進展があった これまで我々が使っていたモデルは反応拡散系を直接用いて数値計算でパターン形成のメカニズムを解明する、という形で研究を進めて来たが、このままだと縫合線の幅がどのくらいの長さで維持されるのか、また湾曲する空間スケールがどの程度かなどを理解することができなかった.そこで、骨形成時の湾曲のダイナミクスを界面方程式の形で最定式化し、Phase Field法を用いて数値計算を行う、という形に切り替えた.これによって、縫合線の幅がどのように維持され、またどのような場合に頭蓋骨早期癒合症が生じるのか、また、湾曲の波長がどの程度になるか、出芽パターンが生じるのがどのような場合か、などが数理解析で理解できるようになった.この結果は論文投稿準備中である また、縫合線近傍の骨棘形成時には毛細血管の侵入が伴うため、血管網のパターン形成に関する基礎的な研究を行った.血管網のパターン形成に必須の拡散性シグナル因子としてVEGFがあるが、これらの拡散ダイナミクスを蛍光蛋白を用いて計測し、周辺の細胞外基質(Fibronectin, HSPG)による制御がないと観測される大きさの構造が作れない事を示した.この研究成果は2011年3月に開かれたEMBL Heidelbergの研究集会で発表した.この結果を縫合線近傍での形態形成に応用するべく、発達中の縫合線周囲でのVEGF関係の遺伝子発現パターンを検索中である
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