研究概要 |
本研究は、生きたイカの神経細胞および骨格筋線維を用い,二光子レーザー顕微鏡によって,生理的条件下における細胞膜修復装置を明らかにすることを目的としている。 米国ウッズホール海洋生物学研究所において、H.M.Fisherman博士(Univ.Texas)とJ.Zimmerburg博士(NIH)と共同実験を行い、二光子レーザー顕微鏡を用いてイカの巨大神経の膜修復装置を観察した。カルセイン-AM、Rhodamin-dextranおよびカルシウムインジケータ色素を膜修復マーカーとして観察することに成功した。その結果、一般の細胞は細胞外カルシウムが膜損傷部から細胞内に侵入することにより、細胞膜修復装置のスイッチが入り、小胞融合による膜修復が行われるのに比べ、イカ巨大神経の膜修復装置は細胞外カルシウムをスイッチとせず、非常にゆっくりとした小胞融合が観察された。 また、香川大学瀬戸内圏研究センター庵治マリンセンターにおいて,生きたアオリイカより新鮮な巨大神経を採取し、本大学に配置された新型超高感度2光子レーザー顕微鏡で観察することに成功した。 同設備を用い、培養細胞にアクチン脱重合酵素であるMICAL-EGFP、およびActin-RFPを発現させ、細胞膜修復装置を観察したところ、上皮細胞および筋芽細胞の細胞膜損傷部に損傷後秒単位でMICALの強い発現が損傷部に観察され、アクチンの脱重合も同時に観察された。同時に、細胞内小胞が膜損傷部に融合しながら膜修復が行われる様子を、LIVEイメージングで捉えることに世界で初めて成功した。
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