ヒトinduced pluripotent stem(iPS)細胞は、多分化能を有した細胞であり、再生医療や臨床試験に今後応用可能な細胞である。iPS細胞を神経細胞や心筋細胞へ分化させる研究は進んでいるが、内胚葉系の細胞に分化させることは困難であるため、効率的な分化誘導方法の確立は遅れている。本研究では、ヒトiPS細胞から肝細胞を効率よく分化誘導させることを目指している。現在、ヒトiPS細胞から肝細胞へ分化させることに成功した例がいくつか報告されている中で、Duncanらの方法をbaseに、endodermからhepatoblastsへの誘導にhematopoietically expressed homeobox(HHEX)を温度感受性センダイウイルスベクターを用いてendodermに強制発現させた。35度の細胞培養でendodermにHHEXは、強制発現され、37度の細胞培養では、HHEXが強制発現されないことを確認した。また、hepatoblasts誘導後には、温度感受性により37度の細胞培養でHHEXの発現を停止させることも確認できた。この手法により、hepatoblastsへの細胞分化誘導において、hepatoblastsの分化マーカーであるHNF3betaの発現を有意に増強させることが可能となった。最終的には、hepatocytesへの分化誘導が促進されAlbuminの産生能に代表されるマーカーの増強が重要であるが、現在のところ、有意な変化を見出すことはできていないため、今後さらなる検討を必要とする。
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