研究概要 |
低分子化合物であるステロイドホルモンが作用を発揮するには、特異的な受容体と結合することが不可欠である。そのため、ホルモンのリガンド・受容体の分子間の結合様式を明らかにすることが、ホルモン分子作用の解明に直結する。本研究では、分子固有の特異的なラマン散乱光を指標に、ステロイドホルモン(リガンド)とその受容体の分子相関について非標識的可視化を試み、従来のGFP分子標識法やオートラジオグラフィー、免疫細胞化学では明らかにされなかったホルモン・受容体の細胞内での結合様相についての新たな知見を得るための試行的研究にチャレンジし、その基礎的データを得ることを目的とした。 微弱なシグナルであるラマン散乱光を検出するためのシグナル検出デバイスの開発や光電子倍増管の改良、3次元XYZ走査型共焦点光学系などの空間解像度向上など、ハード面での革新的創出による新たなラマン顕微鏡(ラマン分光装置の市場で30年以上の実績を持つHORIBA Jobin Yvon社による顕微ラマン装置LabRAMファミリー:XploRA, HORIBA:スペクトル分解能1.0cm-1@532nm、空間分解能1μm)の使用方法の検討に着手した。対物レンズ、レーザー波長、レーザー強度、共焦点ピンホールサイズ、分光スリットサイズ、測定スペクトル範囲、測定時間、データ積算数などの条件の検討に入った。In vitro系への応用として固定細胞、組織の観察を行った。ホルマリン固定、マウント材料、カバーグラスなどによる影響を考慮した。用いた系は坐骨神経標本であり、シュワン細胞がグルココルチコイド受容体を発現していることもあり、軸索とシュワン細胞との関係についての特異的なラマンスペクトルを得た。今後in vivo, in vitroの系においての基本的条件の詳細な検討、GFP蛍光標識法との所見の比較も課題として残った。
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