本研究はルシフェラーゼレポーターを用いて、自由行動下の動物における遺伝子発現をリアルタイムで体表より定量・解析するシステムを構築することを目的として行われた。平成22年度は、時計遺伝子発現レポーターマウス Per1-luc、およびこれと180度発現位相の異なるBma11-lucの2種のトランスジェニックマウスを用い、測定手技の開発・改良と計測システムの確立を目指し、以下の実験を行い、所定の成果を得た。 1.安定的基質投与法の開発:ルシフェラーゼレポーターを用いた遺伝子発現の定量では、安定した十分量の基質投与が不可欠である。特に、サーカディアンリズムや記憶学習などの生理的な変動や、測定手技による負担を極力抑制する必要のあるストレスや恐怖・不安の評価のため、iPRECIOによるプログラミング灌流とOsmotic minipump腹腔内埋め込みによる基質投与法を比較検討し、いずれも24時間、血中レベルが安定的に保てることを高速液体クロマトグラフィーにて確認した。遺伝子発現の低い場合には、iPRECIoを用い、灌流速度を上げることで対応可能であることが判明した。 2.発光定量システム構築と自由行動マウスにおける発光計測実験:発光量はカメラと発光体の距離に依存するため、自由行動マウスの発光量の定量には、三次元の位置補正が不可欠である。そこで、2台のEMCCDカメラを用いたステレオ撮像と、常に発光している位置マーカーを目的位置の周囲に取り付けることで、三次元空間内で、目的位置を追跡するプログラムを開発した。また、位置補正のため、位置による発光量低下の割合を詳細に計測し、プログラムに導入した。さらにオフラインで、取得した時系列データに位置補正を組み込み、補正後の発光値にて、発光リズムを検討することが可能となった。
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