本研究は、ルシフェラーゼレポーターを用いて、無麻酔・無拘束の動物の遺伝子発現をリアルタイムで体表より定量・解析するシステムを構築し、様々な環境刺激や薬物投与などに対する各臓器・組織における遺伝子発現をリアルタイムでモニタリングし、定量解析することにより、遺伝子レベルでの応答、臓器間相関などを解明することを目的として行われた。研究には、安定したリズム発振、予測可能な位相変化など、生理的範囲の変動を高精度に評価できる時計遺伝子のレポーターを用い、計測システム構築、基礎データの蓄積による検討、解析プログラムの作成の3実験を同時進行で進めた。計測装置は完成し、発光マーカー3点による動体追跡によるリアルタイム計測プログラムも完成していた。一方、昨年度の研究により、3次元空間内位置による補正の精度を上げることで、更に測定精度を上げられることが判明した。そこで、3次元空間内の位置だしの精度を上げ、各点の標準発光マーカー発光量の中心点からの減少率を算出した。CCDカメラからの距離による補正値をプログラムに組み込み、計測プログラムを完成させ、このプログラムにより、自由行動下のマウス嗅球、大脳皮質、皮膚における時計遺伝子Per1およびBmal1発現を数日にわたり計測した。0.5秒露光10分間の連続計測を1時間間隔で、リアルタイム計測した。その結果、両遺伝子に特徴的なリズム変動を示すことができた。本システムは、自由行動個体の遺伝子応答を動物の行動と共に、全身の多くの組織で同時に計測することが可能であり、他個体との社会的接触、母性行動などに伴う遺伝子発現、様々な変異による障害など、広範な研究に応用が可能な優れたシステムである。
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