研究概要 |
抗がん剤の薬剤効果をプロモートーム(プロモーターレベルのトランスクリプトーム)でとらえ、薬剤併用効果をプロモーター活性の相加、相乗、拮抗で説明する挑戦を開始した。MCF7細胞を用い、MEK-ERK系を阻害する抗がん剤であるイレッサ、MEK阻害剤であるUO126、PI3K阻害剤としてPI3K-AKT系を阻害するWortmaninを用いた。なお、イレッサはPI3K-AKT系も弱く阻害することが知られている。したがって、イレッサとUO126による相加作用、イレッサとWortmaninあるいはUO126とWortmaninとの相乗作用が期待できる。種々の検討の結果、FBS濃度を2%にして薬物添加後6時間とすることにより、アポトーシスを起こすことなくサンプルを作成することに成功した。このとき、薬剤の効果を情報伝達系タンパク質のリン酸化状態を指標としてウエスタン解析で調べたところ、タンパク質リン酸化阻害において、イレッサとUO126との相加作用、イレッサとWortmaninの相加作用が、おのおのp-ERK,p-AKTで観察された。そこでこのサンプルからトータルRNAを調製した(biological replicates=3)。次にこのトータルRNAからdeepCAGEライブラリーを作成し、CAGEタグを大規模シーケンス解析した。正確な定量データを得るために、ライブラリー調製においてバイアスがかからないNon-amplified deepCAGE法を用いた。各サンプルあたり1000万タグ程度が取れており、ゲノム上へのマッピングとクラスタリングを開始している。さらに、遺伝子レベルでの発現総和を得るために、マイクロアレイデータも取得した。データの取得が順調に進行したため、次年度ではこれらのデータの詳細解析と、必要な証明実験を行い、結果の論文化を目指す。
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