研究概要 |
本研究の目的は、薬剤効果をプロモートーム(プロモーターレベルのトランスクリプトーム)でとらえ、薬剤併用効果をプロモーター活性の相加、相乗、拮抗で説明できるかを検証することにある。MCF7細胞を用い、シグナル伝達系MEK-ERK阻害剤であるUO126、PI3K-Akt阻害剤Wortmannin,その両方を阻害するEGF受容体キナーゼ阻害剤イレッサを用いた。各薬剤単剤、および薬剤併用した細胞から調製したRNAを用いて、解析バイアスのないHeliscope CAGEにより大規模トランスクリプトームデータを取得した(CAGEはmRNAの5'をシーケンス解析する手法であり、プロモーター活性、転写物の発現等を調べることができる)。得られたシーケンスタグをゲノムDNA上にマップしたのち、近傍のタグをクラスタリングして更なる解析に供した。計11,403クラスターが同定され、そのうち9,185クラスターが特定の遺伝子とリンクしていた。クラスターレベルでの発現頻度比較によって、biological replicates間で高い相関(>0.99)が観察され高品質のデータが取れたことが証明された。次に、薬剤併用により有意に発現変動が観察されたクラスターについて、単剤での発現との比較を試みたところ、試みた薬物併用のほとんどにおいて、効果が相加的であることが確認された。薬剤の併用効果は、シグナルレベルで線形ではなく評価は困難であったが、本プロモーターレベルでは線形的な効果を示しており、またこのことから本実験手法による併用効果解析の有用性が証明された。得られた結果をまとめて論文投稿を目指している。なお、本結果は、第34回日本分子生物学会で発表した。
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