研究課題
本研究では、我々が提唱する全く新しい概念「内分泌器官としての骨組織」を基盤として、骨組織から分泌されるホルモン様分子を網羅的にスクリーニングし、かつ同定することを目的とした。初年度に、骨細胞から分泌される因子として、growth differentiation factor 15 (GDF15)を同定した。そこで本年度はGDF15の生理学的役割を検討するために、まず最初に骨代謝に与える影響について検討した。その結果、マウスに大腿動脈結紮を施し、骨組織を虚血・低酸素状態にしたときに、骨細胞からのGDF15の分泌が著明に上昇することを見出した。さらにGDF15の中和抗体を投与することにより、大腿動脈結紮により誘導される骨密度低下が著明に抑制されることを見出した。またin vitro実験により、GDF15は骨芽細胞の機能には影響を与えないが、破骨細胞の分化・成熟化を強力に誘導することも明らかとなった。以上の結果により、虚血や低酸素等の病態生理学的条件下において骨細胞から分泌されるGDF15が、破骨細胞の分化・成熟化を調節することにより、骨代謝を制御していることが明らかとなった。さらに現在はこのGDF15について、in vivoおよびin vitroの両面から糖脂質代謝に対する機能的役割を調べており、骨組織に作用点をもつ肥満や糖尿病等のメタボリックシンドロームに対する新たな治療法開発の可能性の追求を行っている。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
J Bone Miner Res
巻: 27 ページ: 938-949
DOI:10.1002/jbmr.1538
http://www.p.kanazawa-u.ac.jp/~yakubutu/index.html