老人の筋力低下に伴う転倒や骨折は、要介護状態に至る主原因として社会問題化している。この加齢に伴う筋萎縮や減弱を特徴とする病態はサルコペニア(sarcopenia)とよばれ、その発症メカニズムの解明、病態マーカーや治療法の開発が切望されている。一方、骨折時のギブス固定等により骨格筋が短期間内に萎縮することも知られているが、委縮の詳細なメカニズムは不明であり、病態マーカーもなく、サルコペニアとの病態類似性についても明らかにされていない。「筋老化に関する遺伝子群の同定と機能解析」と題した本研究のH22年度の計画としては、若成人と老齢マウスより骨格筋RNAを調製し、逆転写による遺伝子チップ解析にて発現変動の顕著なmRNAを検索することを主に立案した。この網羅的解析の中で顕著な発現低下が観察されるものが多数観察されており、発現上昇を示すものも数種散見されている。アミノ酸配列から小胞体膜タンパク質やCa2+ハンドリング関連タンパク質をコードすると推定されるmRNAから順次、発現増減のRT-PCRによる確認作業を遂行中である。microRNAやsnRNAの発現変動は、幅広いスペクトラムのmRNAにおける翻訳効率やスプライスパターンを制御することが知られている。所属部局に最近導入された次世代高速シークエンサー及び大量情報処理コンピューターを活用して、加齢時に増減するmicroRNAやsnRNAの解析に向けた準備も進めている。
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