小胞体内腔Ca2+結合タンパク質であるサルカルメニンと小胞体膜Ca2+ポンプであるSERCAは加齢マウス骨格筋にてmRNAとタンパク質の発現量が顕著に低下しており、筋老化に伴うCa2+ハンドリング機能減弱への関与が昨年度に遂行された実験から示唆されていた。両タンパク質は心筋細胞の小胞体でも同様に発現していることが知られており、骨格筋における上記の推論は心筋においても検討する意義が高いと考えられた。我々が以前作製したサルカルメニン欠損マウスは特に重篤な心臓機能の異常は観察されていない。そこで、サルカルメニン欠損マウスおよび加齢マウスの心臓におけるSERCA機能に注目した検討を計画した。サルカルメニン欠損心筋におけるSERCAのタンパク発現量は約半減しており、加齢によりその発現量はさらに低下していた。従って、詳細なメカニズムは不明であるものの、サルカルメニンは小胞体内腔側からSERCAのタンパク安定性に寄与していることが示唆される。一方、加齢マウス心筋においては、サルカルメニンとSERCAの発現量が並行して低下していた。遺伝子欠損マウスでの結果を考慮すると、加齢によりサルカルメニンの発現量が低下して、その二次的結果としてSERCA発現量も続落したものと推定される。 心不全心筋と同様に、加齢心筋では小胞体Ca2+ポンプ活性の低下が細胞内Ca2+ハンドリング機構の減弱の主原因の1つと考えられている。上述の研究成果は加齢によるサルカルメニン減衰がSERCA機能低下の要因であることを示唆するものであり、心不全や骨格筋老化との関連を今後検討する必要がある。
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