研究課題
薬物依存時の大脳基底核神経回路破綻を個体レベルで、行動科学的、生化学的に解析を行うために、大脳基底核の直接路と間接路に特異的な可逆的神経伝達阻止法((Reversible neurotransmission blocking ; RNB法)を開発した。直接路と間接路の中型有棘細胞のそれぞれに、特異的なプロモーターを用いて破傷風菌毒素をテトラサイクリン依存的に発現する系を確立することによって、可逆的に神経伝達を阻止する方法を大脳基底核の直接路あるいは間接路において確立した。側坐核の直接路あるいは間接路の神経伝達を遮断したマウスにコカインを連日投与し、薬物依存行動(行動量変化、条件付け場所嗜好性)を観察した。間接路遮断では急性賦活行動量は抑制されたが、コカイン投与3日目以降では野生型対照マウスと同等の高い行動量を示し、3日間のコカインによる場所条件付けでも強い場所嗜好性を示した。それに対して、直接路遮断ではコカイン連日投与でも賦活行動量を抑制し、条件付け場所嗜好性も減少した。すなわち、直接路が薬物依存症形成に必須であることを個体レベルで示した。さらに、薬物依存症の病態形成と維持に関与する報酬行動と忌避行動における大脳基底核神経回路制御機構を、RNB法を用いて個体レベルで調べたところ、報酬行動には直接路が、忌避行動には間接路がそれぞれ必須であることを示した。今後、薬物依存時の大脳基底核神経回路異常の分子機構を解析していく。
すべて 2010
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Schizophrenia Research
巻: 118 ページ: 224-231
Neuron
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