研究概要 |
目的は,受精卵発生初期の組み換え修復機構に注目し,その存在を明らかにするとともに,修復機構エラーによる疾患発症のメカニズムを明らかにすることを目的とする。様々な示唆的データから親子による遺伝情報(DNA)の受け渡しに際して,受精直後のDNA修復機構の関与により片親性ダイソミー(UPD)が発生するのではないかと考えた。本最終年度は,全ゲノム塩基配列データが発表されているHapMap試料を解析対象として全ゲノムシーケンスデータを詳細に検討し,UPDが全ゲノムあたりどれくらいの頻度で発生するのかを検討した。 HapMap試料の中で全ゲノムシーケンスの生データがトリオで公開されていて且つDNAが入手可能なCEUとYRIのそれぞれ1トリオを解析対象とした。Public data baseからBAM fileデータをダウンロード後に,塩基置換部位でUPDが確認出来る組み合わせ(AAxAB->BB,AAxBB->AAorBB)を抽出することによってUPD領域を検索した。塩基配列の確からしさの基準としてMapping Quality(MQ)>40を採用し,UPD候補部位を選別した。CEUトリオにおいて100か所,YRIにおいて178か所の部位がUPDである可能性が残された。capillaryシーケンサーによる確認の結果,CEU,YRIともに1か所残し,次世代シーケンサーによる塩基配列決定の間違いであった。残り1か所をリアルタイムPCR法によって検証したところその部位は,片親から欠失が伝達されているhemizygousであることが判明した。従って今回の全ゲノムデータを利用した解析では,正常トリオ解析で短い範囲のUPDは確認されなかった。UPDが疾患原因となっている現象がしばしば報告されるが,通常の発生・発達で起こるほど頻度が高い現象ではないことが確認された。
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