研究課題/領域番号 |
22659073
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤本 昌代 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (70403235)
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研究分担者 |
北澤 荘平 神戸大学, 医学研究科, 客員教授 (90186239)
北澤 理子 神戸大学, 医学研究科, 特命准教授 (00273780)
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キーワード | 胎児発育不全 / CREB転写因子 / 転写制御 / 臓器形成異常 / パラフィン包埋病理検体 |
研究概要 |
本研究課題は、子宮内発育遅延による死産・新生児死亡の病理解剖症例を対象に、シグナル伝達に関連する転写調節因子や形態形成に関連した遺伝子の異常を解析し、病態との関わりを検討し、新規の胎児致死症候群を同定することをめざす。 これまでに、子宮内胎児死亡剖検症例のパラフィン包埋病理組織からCREBのexon 5の遺伝子変異を検出している。116番目アミノ酸がアスパラギンからグリシンに変異(CREE116)するものであり、この変異が機能的ドメインのどの位置に存在するか、アミノ酸の3次元解析から想定される部位について、詳細を検討中である。 症例と同一のCREB変異体の発現ベクターを構築して培養細胞に導入し、CRE-luciferaseを用いたレポーターアッセイを行った結果、CREB116の転写促進活性は野生型の1/6と著しい減弱を示した。培養細胞に、野生型とCREB116、既報のCERB変異体を導入して免疫沈降Western blotting法にて比較検討すると、CREB116では、CREB蛋白のリン酸化は野生型と同等であったが、その後の転写共役因子CBP/P300との結合が見られず、dominant negativeとして作用し、野生型と競合することで、転写効率を下げる可能性が示唆された。アミノ酸変異が共役因子との結合に及ぼす影響について、詳細を検討中である。 発端となった症例では、諸臓器の異常の中でも、肺の拡張障害が高度で治療抵抗性であった。CREB116が、特定臓器の形態異常や機能不全を引き起こす機序は明らかでない。本年度は、肺の病理組織を用いて、肺胞上皮の蛋白発現を検索した。新生児/胎児死亡の剖検例で、CREB野生型の症例を対象に比較検討すると、一連のサーファクタント関連蛋白のうち、著しい低下を示すものがあり、呼吸不全に寄与した可能性が示唆された。 以上の知見に関しては、今後内外の学会にて報告するとともに、論文投稿準備中である。
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