研究概要 |
がんの増殖・進展におけるシグナルペプチダーゼの標的とその制御機構におけるmiRNAの役割を明らかにし、消化管癌の分子病態の解明と診断への応用を目的として、本年度は以下のとおり実施した。 1)蛋白プロセッシング分子の発現と局在の検討 小胞体シグナルペプチダーゼ複合体(SPC)のサブユニットの内、SPC1-18とSPC-21が酵素活性を有しており、SPC-18は定量的RT-PCRによって胃癌の40%で過剰発現していた。そこで、全長cDNAから蛋白を合成し、これを抗原としてポリクローナル抗体を作成した。ウエスタンブロットではマイクロソーム画分に集積しており、免疫染色では、正常胃粘膜上皮には発現は認められず、胃癌では組織型によらず、22/99例(26%)で細胞質に陽性であった。陽性症例はステージの進行した症例で有意に高頻度に認められ、進行癌症例に限ってみてもSPC-18陽性症例は陰性症例に比較して有意に予後不良であった。 2)蛋白プロセッシング分子の機能解析および標的分泌蛋白の解析 SPC-18遺伝子を強制発現させた胃癌細胞株(MKN-1-SPC-18)を準備し、増殖能、運動能、浸潤能をそれぞれ、MTT assay, Wound healing assay, invasion assayで検討しコントロール細胞株と比較したところ、いずれも有意に促進された。さらに、SPC-18強制発現株はコントロールと比較して、SCIDマウス皮下における腫瘍増殖スピードが有意に早かった。標的分泌蛋白を同定する目的で、強制発現させた胃癌細胞株(MKN-1-SPC-18)とともに、SPC-18とSPC-21のsi-RNAを準備し、両SPCを発現している胃癌細胞株KATO-IIIを処理したところ、各々のSPCが発現抑制できることが確認された。これらを用いて、種々のサイトカインの変化を検討している。
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