研究課題
私は、以前ピロリ菌の病原遺伝子であるcagAが、東アジア型と欧米型に分類されることを発見した。日本を始めとする東アジアのピロリ菌は、ほとんどが東アジア型に分類されるが、稀に欧米型を持つ菌も見られる。本研究では、東アジアに認められる欧米型cagAを持つピロリ菌についてMultilocus Sequence Typing (MLST)を用いた遺伝子解析を行い、その起源・疾患的特長を明らかにすることを目的とし、特に、沖縄の欧米型cagAを持つピロリ菌の起源を明らかにし、さらにこれらのピロリ菌感染者が、通常の東アジア型菌感染者に比べ、潰瘍、胃癌などの疾患になりやすいか否かも明らかにすることを目標とした。337症例において、cagA遺伝子を持つピロリ菌は86.4%であった。そのうち、欧米型cagA遺伝子を持つものは16.3%であった。年齢と性別を調整し検討を行ったところ、東アジア型cagAを持ち、vacA slm1タイプのピロリ菌を保有することが、胃癌のリスク要因であることが分かった。欧米型cagA遺伝子を持つピロリ菌のMLSTによる遺伝子系統解析において、欧米で分離される欧米型cagA遺伝子を持つピロリ菌と、沖縄にて認められる欧米型cagAを持つピロリ菌は、その系統が大きく異なることが分かった。沖縄県における欧米型cagA遺伝子を持つピロリ菌のうち、72.2%が系統樹解析において一団を形成し、これらが東アジアに多く見られるピロリ菌と同じ系統に属した。同様に、cagA遺伝子を持たないピロリ菌も、系統樹解析にて一団を形成し、これらも東アジアに多く見られるピロリ菌と同じ系統に属した。STRUCTURE解析においても、同じ欧米型cagAを持つピロリ菌であっても、その他の遺伝子の構成が典型的な欧米型のピロリ菌とは異なっており、単純に欧米型のピロリ菌が欧米人から沖縄の人々に水平感染したものではないと考えられた。以上より、沖縄県において胃癌が少ないのは、沖縄県におけるピロリ菌タイプが、日本の他の地域と異なることに由来している可能性がある。また病原性が低いとされる欧米型cagA遺伝子を持つピロリ菌は、欧米諸国で認められるピロリ菌とは起源を異としたものであり、沖縄で固有に進化したものであると考えられる。現在ブータンやミャンマーの菌の解析も進行している。
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