研究課題
B型肝炎ウイルス(HBV)はその発見から40年余も経つが、その生物学的特性の理解度は低い。臨床的にもなお治療抵抗性を示すことも多く、ワクチン非有効株も出現している。日本においても20歳以上では多くのHBVキャリアーや慢性肝炎患者が存在し、世界的には約2~3億人の肝炎患者が存在する世界的にも有数の巨大感染症である。HBVの生物学的特性や病態発症機構を詳細に記述し、新規の抗HBV剤を開発するには、未だに分離・同定されていない感染受容体を明らかにし、in vitro及びin vivoにおける確固とした感染系を樹立することが重要であると思われる。HBV膜粒子を被り、gfp遺伝子を含んだレトロウイルスゲノムをもつpseudotypeウイルス(HBV pseudotype;HBV-p)の作製に成功した。本ウイルスはgfpと薬剤耐性遺伝子(ハイグロマイシンやG418耐性遺伝子など)をコードするレトロウイルスゲノムを内包するコア(gag)粒子がHBV膜粒子を被った粒子として放出される。本ウイルスを利用して肝実質細胞のほ乳類発現ライブラリーを導入した培養肝癌細胞等でスクリーニングし、HBV受容体の分離・同定を試みた。スクリーニング中に培養肝がん細胞株(HepG2)にある処理をすることによりHBV-pの感染性が向上することが観察された。この現象は導入したcDNAの発現に依存しないことから、HepG2が内因的にもつHBV感染受容体が活性化することによるものと考えられた。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)
化学療法の領域
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Biochem.Biophsys.Res.Comm.
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