研究概要 |
成人T細胞白血病(Adult T-cell Leukemia: ATL)は,これまでの化学療法剤がほとんど効果がなく、治療を行うと却って病態が悪化することもあり、新たな治療薬の開発が切望されている。アフリカで伝統医薬として使用されている各種植物抽出物でATL細胞に効果を示す抽出物のスクリーニングを行ったところ、ATL細胞に対し50%増殖抑制値は0.303~2.79μg/mlの範囲であった。一方、健常人の末梢血リンパ球に対しては545~>1000μg/mlであり、Selective Index (SI)は>1000倍以上であった。この抗ATL細胞活性を指標にして、液相液相分配、シリカゲルクロマトグラフィー、逆クロマトグラフィー等々で抗ATL細胞活性分画を精製し、最後にHPLCで分画したところ10番目と12番目の分画に強い抗ATL細胞活性を認めた。この2つのピークをそれぞれ再度HPLCで分画したが、どちらのピークからも結果的に2つの活性ピークが生じた。この分画をNMRで分析した結果、抗ATL細胞活性物質はtoosendaninであり、異性体である12-acetoxyamoorastatinと29-deacetylsendaninの双方が混在していることが判明した。今後、精製したtoosendaninを用いて作用機序の解明やATL細胞のみならず他の上皮性腫瘍細胞、薬剤耐性腫瘍細胞に対する効果を検討する。
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