研究概要 |
AIRE発現細胞を対象とするfate mapping(運命写像)を行う過程で、AIREが胸腺での発現に先立ち、原腸陥入(gastrulation)以前の発生初期に発現する事実を見い出した。初期胚におけるAIRE発現の意義、およびその発現制御機構を解析する目的で、AIRE/GFP-KI(+/gfP)およびAIRE/GFP-KI(gfp/gfp)の両者からES細胞を樹立した。いずれのES細胞でもGFPの発現を認め、AIREがES細胞においても発現していることが明確になった。興味深いことに、AIRE/GFP-KI(+/gfP)およびAIRE/GFP-KI(gfp/gfp)由来のES細胞にはGFP発現集団とGFP陰性集団とが混在し、AIREの発現が確率論的(stochastic)もしくは振動性(oscillation)をもつことが示唆された。他方、zebrafishにおいてもAIRE遺伝子のhomologue,(z-aire)が存在することを確認し(accession No.EUO42187)、初期発生におけるAIREの役割を明らかにする目的で、z-aireのantisense morpholino(z-aire MO)をzebrafish初期胚に注入し、z-aireノックダウンによる表現型を解析した。その結果、zebrafishの尾のcurl downを認め、AIREが発生過程において何らかの役割をもつことが明らかになった。本実験では、z-aireMOの特異性を明確にするためにzraire MOの5 base mismatch MOの注入を対照実験として行ったが、その場合には表現型を認めず、z-aireノックダウンによる効果が特異的であることが確認された。今後は、Z-aireノックダウンによる表現型が野生型AIREによってrescueされることを、in vitro transcriptionによって作製したhuman AIRE RNAの同時注入によって確認する予定である。また、rescue実験においては、AIRE欠損症として報告されているAIREのPHD1ドメイン内disease mutantであるC311YやP326Qによってはz-aireノックダウン表現型がrescueできないことも確かめる予定である。
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