研究課題
近年の薬剤耐性病原菌による感染症の増加は、感染症治療に対して選択可能な薬剤を大幅に制限することとなりそれへの対応は感染制御における喫緊の課題となっている。しかし、一般健常人における薬剤耐性菌(特に腸管内)の保菌状態とその誘導に関わる生活因子に関してはほとんど調査研究されておらず不明である。そこで本研究では、本邦における一般健常人の腸管内薬剤耐性菌保有の拡がりを明らかにし、さらに、疫学的解析より薬剤耐性菌を保菌するに至った生活因子の特定を行い、今後の公衆衛生学的対応の指標となる成績を得ることを目的とした。本研究の目的を達成するために、研究初年度は、大阪大学職員健康診断参加者ならびに地域住民を調査対象として薬剤耐性腸内細菌の拡がりの検討を行った。過去3ヶ月間の抗生物質服用者を除外した参加者の糞便検体を収集すると同時に質問表による参加者の生活因子解析を実施し、糞便検体から薬剤耐性腸内細菌の検出、単離された菌の薬剤感受性試験、菌種同定、薬剤耐性遺伝子解析を行った。その結果、調査した218名の成人健常人から6.4%の割合でESBL産生腸内細菌が検出され、その92%がCTX-M型遺伝子を保有していることが判明した。ESBL産生菌の91%はE.coliであった。また、テトラサイクリン系抗菌薬にも耐性を示すものが46%と多剤耐性化の傾向が認められた。得られた成績の一部は国内学会ならびに査読科学雑誌で発表した。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
Journal of Infection and Chemotherapy
巻: DOI 10.1007/s10156-011-0225-2 ページ: DOI 10.1007/s10156-011-0225-2
日本環境感染学会誌
巻: 26(印刷中)