研究課題
近年の薬剤耐性病原菌による感染症の増加は、感染症治療に対して選択可能な薬剤を大幅に制限することとなりそれへの対応は感染制御における喫緊の課題となっている。しかし、一般健常人における薬剤耐性菌(特に腸管内)の保菌状態とその誘導に関わる生活因子に関してはほとんど調査研究されておらず不明である。そこで本研究では、本邦における一般健常人の腸管内薬剤耐性菌保有の拡がりを明らかにし、さらに、疫学的解析より薬剤耐性菌を保菌するに至った生活因子の特定を行い、今後の公衆衛生学的対応の指標となる成績を得ることを目的とした。研究2年目となる平成23年度では、前年度に収集した耐性菌の表現型、耐性遺伝子型解析、保菌者背景調査による疫学的解析を行った。加えて、今までの研究結果から、感染感受性者が集積する傾向の強い介護老人健康施設入所者における高い耐性菌保菌が示唆されたため、参加対象者の疫学的解析より薬剤耐性菌を保菌するに至った生活因子の特定を行った。調査した258名のうち50名(19.3%)からESBL産生表現型を示す耐性菌が分離され、耐性菌保菌率が前年度に行った一般健常人の保菌率(6%)より有意に高かった。これは、一般人に比し老健施設入所者の抗生物質使用頻度の多さと有意に相関することが疫学解析からも明らかとなった。また、耐性菌腸管内保菌者が自己保菌耐性菌による尿路感染症に罹患することも本研究により明らかとなった。これら研究の成果は、学会発表(日本細菌学会)ならびに専門科学雑誌(環境感染誌、Infection)に論文として発表した。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Infection
巻: 39 ページ: 467-471
環境感染誌
巻: 26 ページ: 154-156