従来の研究では、貧困度と介護保険利用度の関係は殆ど検討されてこなかった。そこで、本研究では、(1)貧困(家計所得)など経済的環境と介護費用の関連性、および、(2)貧困(家計所得)など経済的環境と要介護状態・健康状態の関連性を明らかとするため、以下の諸点を評価検討することとした。 (1)要介護高齢者の経済状況(貧困)が介護需要に及ぼす影響を定量的に評価すること。 (2)経済状態、健康(要介護)状態、介護保険利用度、終末期医療と死亡の関係を検討すること。 データは個人単位に時系列的なコホートデータ形式に変換し、解析に利用する。また、分析は次の二期に大別して行う。(1)貧困と身体状況(医療・介護)の関連性の解析、および、(2)経済状態、健康(要介護)状態、介護保険利用度、終末期医療と死亡の関連性の検討。 平成22年度は、介護給付費実績データの提供を受け、調査対象となる貧困高齢者の選定作業を行うとともに、直近の文献レビューを行い、経済的状況(家計所得)に伴う介護、医療サービス受益への影響等に関する先行知見を整理し、貧困の要介護高齢者の意志決定と行動について定式化を行い、介護サービスの需要関数を推定している。また、貧困である要介護高齢者を対象にサンプル調査を実施して、データの収集と分析を行い、並行して先行研究の知見を基に本研究用の調査票作成とパイロット・スタディを行っている。
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