我々が提唱した新規静脈血栓塞栓症発症リスク「アンチトロンビン抵抗性」の検査法として開発したトロンビン不活化動態の解析法の改良と評価を実施した。改良点の1つ目は、プロトロンビン活性化反応系で、プロトロンビンアクチベータとして使用してきた蛇毒が野生動物保護の観点から入手困難になってきたため、安定して入手可能なウシ由来の凝固因子(活性型第X因子および活性型第V因子)を用いた解析法への改良を実施した。すなわち、反応系のpH、イオン強度、リン脂質濃度、塩化カルシウム濃度、活性型第X因子および活性型第V因子の濃度とプロトロンビン活性化時間、アンチトロンビン濃度とトロンビン不活化時間などの至適条件を検討設定した。改良法においても、アンチトロンビンによるトロンビンの不活化動態を蛇毒由来プロトロンビンアクチベータを用いた場合と同様にアンチトロンビン抵抗性を検出可能な解析法が開発できた。しかし、アンチトロンビン・ヘパリン複合体を用いたトロンビン不活化動態解析法においては、蛇毒プロトロンビンアクチベータを用いた場合に比してアンチトロンビン抵抗性に対する検出感度が低下する傾向にあった。 改良点の2つ目としては、開発したトロンビン不活化動態解析法が静脈血栓塞栓症発症リスク検査法として一般病院の臨床検査室で活用されることを考慮し、一般病院の臨床検査室で使用されている臨床検査機器への解析法の最適化を実施した。比較的広く使用されている2機種のうち、自動化・簡易化の進んだ装置を用いた場合は、使用できる試薬数、反応時間の設定などに制約は多いが、解析法の一部改変によりスクリーニング検査法としては使用可能となった。一方、より細かい設定が可能な装置では、研究用の機器を用いて解析した場合に比べてプロトロンビン活性化はやや低値となったがアンチトロンビン抵抗性の詳細な検出が可能であった。
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