本研究の最終目標である、インフルエンザの亜型を高感度に診断することを実現するために、3種のインフルエンザウイルスA型インフルエンザウイルスの新型(HINI) Aソ連型(H1N1)およびA香港型(H3N2)に対する高性能モノクローナル抗体の作製を次世代ハイブリドーマテクノロジーに基づき行うことを目指した。その第1歩として、3種の亜型ウイルスを用いてマウスの免疫化を行い、産生される抗血清の各亜型に対する特異性を検証した。免疫抗原としてMDCK(イヌ腎臓細胞)感染インフルエンザウイルスおよびインフルエンザウイルスの主要タンパク質の1つであるHA(ヘマグルチニン)を用いて免疫化を行った。各抗原を複数回免疫後、眼窩静脈叢から採血を行い抗血清を調製し、ELISA(酵素免疫測定)法およびHI法(赤血球凝集抑制試験)を用いて、各抗血清中に存在する目的の抗体の特異性を検討した。その結果、HI法において、それぞれの亜型特異的な抑制反応を確認することができた。HI法とは、予めHAと抗体を反応させることで、HAによるニワトリ赤血球の凝集作用を阻害する検査方法である。3種の亜型すべてにおいて、その特異性が検出できた。これらの結果は、亜型特異的エピトープ(抗原決定基)が、HAに存在し、それに対する特異抗体産生を示唆するものであると考えられる。そこで、次世代ハイブリドーマテクノロジーに基づき、ビオチン化ウイルスまたはビオチン化HAコンジュゲートを用いて感作B細胞を選択後、ビオチン/アビジン架橋によって目的のB細胞―ミエローマ細胞複合体を形成させ、電気パルスによって両細胞の選択融合を行い目的のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを作製した。その結果、複数のハイブリドーマを得ることができたが、その抗体価は、高感度診断には十分なものではなかった。H23年度はこの結果を踏まえ、免疫方法の改良を行い、次世代ハイブリドーマテクノロジーに基づく亜型特異的モノクローナル抗体の作製を継続して検討する。
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