研究課題/領域番号 |
22659121
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 裕之 金沢大学, 医学系, 教授 (30231476)
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研究分担者 |
人見 嘉哲 金沢大学, 医学系, 准教授 (70231545)
神林 康弘 金沢大学, 医学系, 講師 (20345630)
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キーワード | インフルエンザ / スギ花粉症 / T細胞エピトープ / リポソームワクチン / ペプチドワクチン / α-GalCer / 細胞傷害性Tリンパ球 / 細胞傷害性Tリンパ球 |
研究概要 |
従来のインフルエンザワクチンであるHAワクチンは主として液性免疫を誘導するものであったため、免疫の持続期間は短く、抗原変異に頻繁にワクチンを更新する必要があった。さらに交差防御能をもつ細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は標的抗原(内部タンパク質由来ペプチド)が提示されないため誘導されないという大きな欠点があるため、感染の重篤化は防げるが発症に対する予防効果はそれほど大きくない。そこで、昨今、提唱されているリポソームワクチンの利点と、ナチュラル・キラーT活性化が持続するスギ花粉症ペプチドワクチンの原理を併用し、インフルエンザ由来のCTLエピトープを有する抗原ペプチドとスギ花粉のT細胞エピトープをリボソームに化学結合することによって、変異に対する安定した対応と持続性を満足した新しいインフルエンザウイルスワクチンの開発を試みた。その際、リポソームカプセルのリン脂質2重層にNKT細胞活性化物質「α-GalCer」を挿入し、Uchidaらの方法に基づき、スギ花粉T細胞エピトープを封入し、スギ花粉症患者末梢血Tリンパ球を用いて作成したスギ花粉アレルゲン中のT細胞エピトープを含むペプチドのアミノ酸の一部を置換したアナログペプチドを用いた。その有効性を証明するために、本年度ではインフルエンザウイルス感染およびスギ花粉症モデルマウスを用いる実験を行った。BALB/c雌性マウス(8週齢)にリポソームワクチンを6日間、予防的に連続、筋肉内投与する群を4群を設け、そのうちの2群には、11日目にインフルエンザウイルス(IFV)を経鼻接種した。そのうちの1群には、9日間、スギ花粉を投与し、これらのスギ花粉症感作群に加えて無感作群を1群設ける。同様に11日目にIFVを摂取しない群を2群設けた。IFV抗体価を指標として検討した結果、新しいインフルエンザウイルスワクチンの有効性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ワクチンの構築を完成し、その際、当初の目的の1つであるリポソームワクチンの利点とナチュラル・キラーT活性化が持続するスギ花粉症ペプチドワクチンの原理を併用したことによって、その有効性を動物実験によって証明することができたため、おおむね順調に進展していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
より高病原性のウイルスとしてA/R(duck/Mongolia/54/01-duck/Mongolia/47/01)(H5N1)(R(Mong-Mong)(H5N1))を10日齢の発育鶏卵で増殖させ、不活化・精製し、インフルエンザウイルスCTLエピトープを構築し、前年度の同様のモデルマウス実験を行う。インフルエンザウイルスに対して細胞性免疫を効果的に誘導するためには、CD27を高発現しCD43を低発現するCTLを選択的に形成するようなワクチンの条件(インフルエンザウイルスCTLとスギ花粉T細胞エピトープの構築、リポソームワクチンの投与量、アジュバントの種類)を再設定することによって、より有効性の高いワクチンを開発する。
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