研究課題
経済協力開発機構OECD毒性試験ガイドライン(No.406)に沿って、雄と雌のモルモット10匹及び対照群5匹に、トリクロロエチレンと代謝物のトリクロロエタノールおよびトリクロロ酢酸を塗布して、モルモットマキシミゼーションテストを行った。まず、皮膚の感作率はトリクロロエチレンの場合、雄70%、雌90%、TCEの場合。雄20%、雌50%であった。TCAは雄が1匹のみ感作した。皮膚の病理像は、好酸球・リンパ球浸潤、浮腫、微小水泡についてスコアリングを行った。トリクロロエチレン群の場合真皮層に好酸球が多く見られ、これはパッチテストで2と判定された動物に多かった。リクロロエタノール及びトリクロロ酢酸群の場合、好酸球は軽度観察されたが、その程度はトリクロロエチレン群の場合より軽度であった。一方、肝臓の病理所見は、脂肪滴、炎症細胞浸潤、壊死について評価したが、すべての群で大部分正常組織像であった。しかし、トリクロロエチレンの場合、肝臓辺縁部と中心部に局所的な層状壊死とその周辺のリンパ球浸潤および空胞化が限局的に観察された。トリクロロエタノール群では肝臓辺縁部にごく軽度の壊死が、トリクロロ酢酸群では肝臓辺縁部に局所的な層状壊死とその周辺のリンパ球浸潤がわずかに見られた。以上の様に、皮膚や肝臓に大きな病理的変化をもたらすのはトリクロロエチレンであることが明らかとなった。しかし、トリクロロエタノールの関与も否定できなかった。ついで、トリクロロエチレン代謝に関わるCYP2E1の蛋白発現を検討した。トリクロロエチレン群の肝臓ではCYP2E1が明らかに誘導されていた。一方、トリクロロエタノール群では雌のみ対照群に比べ有意に蛋白発現が増加しており、逆にトリクロロ酢酸群では雄で有意に蛋白発現が増加していた。また、肝機能マーカーである血清ALT及びASTをWakoのキットを用い測定したが、各群に有意差は認められなかった。
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Environ Health Perspect
巻: 118 ページ: 1557-1563