研究概要 |
抗体を作成する前段階として、電気泳動で70kD付近にトリクロロエチレン曝露による特徴的な強いバンドが発現していたので、このバンドをカットして、プロテオミクス解析を行った。HSP70、HSP70の一種である小胞体ストレスマーカーのGRP78とunknown proteinが抽出された。HSP70とGRP78をWestern Blot分析をしたが、いずれもトリクロロエチレン曝露による増強は認められなかった。トリクロロエチレン曝露によるUnknown proteinのペプチド解析結果を参考に抗体を作成しようとしたが、うまくいかなかった。そこで、視点を変えて、肝機能や免疫反応に関わるメカニズム解析を行った。肝機能検査では、トリクロロエチレン曝露によってALTやASTのトランスアミナーゼよりもγGTP値の上昇が、特に雌モルモットで強く観察された。遅延性の4型アレルギーを想定して、CD4,CD8、TNFαの免疫染色を試みたが、うまく染色出来なかった。また、血漿を用いた免疫応答の解析をした。IgEの上昇は観察されなかったが、インターフェロンγ(IFNγ)が、トリクロロエチレン曝露によって上昇した。トリクロロエチレンの主代謝酵素CYP2E1のWestern blot分析と免疫染色を行った。肝臓のCYP2E1発現は明らかに増大し、誘導されていることが確認できたが、皮膚には発現していなかった。即ちCYP2E1による免疫複合体の形成は確認できなかった。以上の結果より、トリクロロエチレンにより引き起こされた皮膚・肝障害はTh1優位の4型アレルギーであることが推察されたが、CYP2E1との関連性はさらに検討が必要である。トリクロロエタノールによってもアレルギー反応が誘導されるが、その関与はトリクロロエチレンに比べると弱いと推察された。
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