本研究は、事務機器を使用するオフィスにおいて2年に分けて実施するフィールド研究であり、本年度はその一年次として、まず超微小粒子(UFP)の発生と室内の空気環境に関する評価を行うとともに、その評価に基づき、UFPの曝露が比較的多いと考えられる職種の作業者に対して、自覚症状の調査と健康・疾病状況に関する情報収集を行い、次年度に実施を予定する心拍変動性(HRV)測定調査のための準備を行った。 その結果、複写機の作動中にUFPの発生が起こることが確認され、また発生量は機器の運転開始直後にとくに顕著であった。機器の連続運転に伴う室内のUFP濃度は、機器の種類、稼働の状況(複写枚数、速度など)、空気環境(温度、湿度、気流)などによって影響を受け、必ずしも一定の濃度レベルになるものではなかったが、定点における簡易連続測定器を用いた相対的な濃度変化の時系列的な記録は可能であった。一方場所を移動する作業者の個人曝露を連続的にモニタリングすることは技術的に困難であることが判った。UFP曝露を受けやすい対象として、複写機の保守・メンテナンスを行う作業者を抽出し、調査したところ、典型的なシックビル症候群と判断されるものは認められなかったが、UFP曝露が少ないコントロール作業者に比較して、せき、たんなどの呼吸器刺激症状や、眼や皮膚のアレルギー症状を有する者がやや多く認められるなどの差異が認められた。 以上の結果を踏まえて、来年度はUFP濃度をある程度コントロールする条件を定め、急性の症状が出ない程度の濃度において、HRVとの関連性を検討する予定である。
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