研究概要 |
インスリン抵抗性・分泌能と循環器疾患のリスクファクターおよび発症との関連を明らかにすることを目的とする。 1)ドック受診者における循環器疾患リスクファクターとの関連: 前年度より対象年度を2年間拡大し、2008年1月~2012年3月の大阪府立健康科学センター循環器ドック受診者40~79歳352人のうち重複を除く男性108人、女性109人について解析した。ロジスティック回帰分析の結果、内臓脂肪面積過剰(≧100㎠)の性・年齢調整オッズ比(OR)は、インスリン抵抗性で4.8(2.5-9.3)、分泌能低下で0.4(0.2-0.8)と、それぞれ有意であった。内臓脂肪面積の過剰はインスリン抵抗性の増大と関連したが、一方で分泌能低下の抑制と関連した。 2)地域住民における循環器疾患発症との関連: 2000~2001年の循環器健診を受診した40~79歳の大阪、秋田、茨城の地域住民で、空腹採血かつ脳卒中・虚血性心疾患(CHD)非既往者の男性1,658人、女性2,896人を各2008年末、2009年末、2005年末まで追跡した結果、脳卒中で男性39人、女性36人、CHDで男性23人、女性11人の新規発症を認めた。インスリン抵抗性あり群、正常群の順に、脳卒中の性・年齢調整発症率(/人口千人年)は、2.0、2.4(p=.86)、CHDの性・年齢調整発症率は、1.5、0.9(p=.68)であった。一方、インスリン分泌能低下群、正常群の順に、脳卒中発症率は、2.9、1.9(p=.63)、CHD発症率は、1.1、1.0(p=.92)であった。インスリン抵抗性は虚血性心疾患の発症リスクと、インスリン分泌能低下は脳卒中の発症リスクと正の関連の傾向を示したが、有意な関連には至らなかった。今後、追跡年数を増やして検討を続ける。
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